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失速の連鎖

2008年4月号

    新幹線に初めて乗ったとき、窓外の景色が一瞬にして過ぎ去っていく…そのスピードに、「あー、人間は越えてはならない一線を越えようとしている…」と不安に襲われたことがあった。青春の真っ只中だった。

 先日、惑星物理学の松井孝典先生から、エライことを教えていただいた。人間はいま、豪州の鉄鉱石や石炭などを、大型船で日本にせっせと運んでいる が、もともと人間の手を借りなくても、地球の営みは、豪州大陸を丸ごと日本と合体させる必然だそうで、人間はその合体の部分を触っているだけのことだそうだ。問題は、人間のこの営みが、地球のリズムの何と10万倍という速度で行われているということだ。

 人間の欲望が、地球のリズムの10万倍の異常さで地球の大地や海底を掘り漁り、動かしまわって汚染や異物を猛烈に撒き散らしている。石油の次はア マゾンの森林だ。石油代替の砂糖キビ栽培のため、森林が育まれてきたリズムの10万倍の速度で森林を破壊している。これが現代人間の欲望のリズムだ。

 ブレーキが利かない!この「失速の連鎖」という怪物はとめようもない。環境破壊の連鎖にとどまらず、生命の内部でも失速への道を歩んでいる。流行 の遺伝子組み換えも、生命が誕生して死んでゆくリズムを、物凄い速度でかき回して、植物や動物を高速発育させようとしている。もっと食べたい。

 そしてもっと生きたい…近年は、体内時計の針が振り切れてしまう異常な速度で、生命延長技術が発達しつつあるが、どんなに人間の寿命を延ばしたとて、地球の人間圏の寿命はたったひとりの寿命分しかない。こちら立ててもあちら立たずだ。
 松井先生は、このままでは地球の人間圏は80年で終わるとおっしゃる。人間はこの100年間で1,000万年分もの速度で生きてきた上、あと 800万年分も生きられれば十分ではないか!」…と醒めたことをおっしゃる。しかしそういうわけにはいきません。可愛い子どもや孫たちが、人間圏の崩壊を 見届けながら一生を終えていく…そんな!

 地球を掘り漁るのは、「もっと楽したい」欲望からだ。遺伝子組み換えは「もっと食べたい」欲望のなせる業だ。この止め処もない「失速の連鎖」の原因は極めて明確。私たちの中にある際限なき欲望だ。
 はてさてこの「失速の連鎖」をどうしたものか?目をつぶって「欲望制御」のギアを入れて、自分でブレーキを踏むしかない。しかし欲望の制御など、 人類史上できもしなかった難題だ。たった100年の異常な「失速」で、大変なツケを負ったものだ。そのツケを可愛い子や孫の世代に背負わせるなんて、動物の親なら絶対にしない、無責任の極みだ。私たちは動物にも劣る!

 子どもたちの防御のために、せめて「自己制御」の極意を叩き込んではやっただろうか。確かに厳しく躾けたから、子どもたちは、私たちよりはるかに 自己抑制に秀でている。しかし、しょせん制御ギアの点検を怠った私たちが行った躾だから、「失速の連鎖」など止めようもないだろう。子どもたちを劣勢の戦 に送り出すしかないのなら、せめて戦の場面をこれ以上拡大しないことが、私たちにできる最後の罪滅ぼしだと自戒する。「一層の自己制御」…間もなくの死ま での課題は重くてつらい。 

 【工藤】


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