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工藤さん

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自信を持とうよ ニッポン

2013年3月号

 日本政府は、失われた20年を取り戻すという。間違いである。この問題の立て方には、叡智結集の香りなく、20年を浪費したこれまでの枠組みや、利権や、手法がまた、そのままぞろっと勢揃いし始めた感がある。
 新しい出発をするにあたっては、これまでの何を捨て、何を大事にすべきなのかが明確に整理された、新しい創造軸が必要である。肝心のこの基軸がなければ、 斬新で実のある創造への出発は期待できない。 さてそれで、その新しい創造を行う潜在力が、いまの日本にあるものだろうか。YESである。自信喪失の日本人は、自分を見つめる視点を、積極的なものに転 じることからこそ始めなければならない。

 絶頂期の日本人は「日本の潜在力は世界一で、汲めども尽きぬ」と信じきって、エズラ・ボーゲル氏の「ジャパンアズNo.1」という語に酔いしれたもの だ。その「日本の潜在力」という言葉を、最近は誰も使わなくなったし、まるで坂道を転げ落ちるかのような悲観論ばかりが横行している。しかしどっこい、虚心坦懐に見つめてみると、いま日本には、創造の潜在力が溢れ出でていることがわかる。
 確かに日本は課題だらけだ。深刻な課題解決を迫られ続けうんざりして、ことの本質が見えなくなっているが、「問題・課題は、創造の生みの親」であることに一刻も早く気づいて、自信に満ちた出発をすべきである。再生へのニッポン!

 さてこの新たな視点から日本を眺めると、その潜在力の多さに驚かされる。これらのひとつひとつを、国家戦略として紡いでいけば、壮大な成熟社会のシナリオが出来上がる。あとはその紡ぎ手を俟つのみである。
 湧き出る潜在力をひとことで表現すると、次のようになる。日本はいま、五重苦、六重苦ともいえる難題に苦しめられているが、それらのどれもが、世界に先駆けて遭遇しているものである。そして世界の各国は、日本の次やそのまた次に、同じ難題に悩まされる定めにある。
だから、日本が悩み抜いて、必死に編み出した難題対策の数々は、他の追随を許さない「日本の独占ノウハウ」であり、日本は「世界規模の市場ニーズ」を先取りできるポジションを手にすることになる。
 急速な少子化と高齢化、成熟社会ゆえの歪みと制度疲労、地震など自然災害への恐怖、原発事故への恐怖とエネルギー確保の難しさ、地球汚染と経済活動との 調整デイレンマ等々、これらへの対処のどれもが、時間軸を経ながら、世界的ニーズとして顕在化してくることになる。日本には、その対処ノウハウが着々と積 み重ねられている現状にある。

■新潜在力Ⅰ 少子化、高齢化への対応能力
 出生率の低迷と急激な高齢化。これは元気が出にくい、つらい課題だ。…が、ここは嘆かずに、人口構成の変容に合わせて、快適な社会構造を創り上げることだ。出生率向上対策は、なかなか難しい。とはいえ、某国の「一人っ子」政策などよりも、はるかに救いのある課題である。出生率を上げようという政策は、親 に希望と展望を与えようとする「善」であり、産みたくても産ませない政策は、親から希望をむしり取る「哀」だからである。そしてこの出生率問題に救いがあるのは、人々が、日本の潜在力に自信をもつことができさえすれば、出生率は必ず上がるということである。もしかしたら、このようなシナリオによる出生率向 上策は歴史的に初めてのことかもしれない。
年寄りの扱いと介護問題は大変だ。…が、この難題に対しては、日本がもし、年寄を甘やかし過ぎず、過保護にしないで、江戸の元気な隠居制や順送りの姥捨 制の智慧を、現代の政策として紡ぎえたとき、この難題は、当事者の年寄そのものが納得できる、見事なサービス・システムとして、世界に名を馳せることにな るはずである。

■新潜在力Ⅱ 成熟インフラのメンテ能力
…再び、人からコンクリートへ…
 文明が成熟すると「コンクリートからひと」へと、社会の課題は進化する。しかし一方で、成熟が進むと、あるときから社会インフラの劣化が一挙に進む。現 代日本では、鉄道システム劣化のゆえのダイヤの乱れや事故発生が目に余る。高速道のトンネル劣化事故は当事者の油断ゆえの事故であるとはいえ、本質的に は、誰にも未知の「文明のインフラ・ツールのライフサイクル」そのものにかかわる制度疲労事故である。

 サンフランシスコで高速道路の橋げたが倒れたとき、日本では絶対に起きないと豪語した専門家が、阪神淡路大震災での橋桁壊滅に言葉を失った。鉄道システムから、高速道、海岸埋立て、地震対策、原発立地問題等々の社会インフラのすべてにおいて、高度成長期の施策期からほぼ50年を経たゆえの、見直し・やり直し が必要となってきている。疲労した社会インフラ群を点検し、新たなライフサイクルに乗っけるための、グランドデザインと高度なメインテナンス力が求められている。日本はきっと、この課題を見事にクリアーするだろうが、その時日本は、この分野では、世界一の熟達国の立場を獲得している。

■新潜在力Ⅲ エネルギー創出技術力
 日本は世界で唯一の被爆国であり、今度は原発の大事故で悩んでいる。原発事故の国としては、アメリカ、ソ連に次いで三番目だが、アメリカ、ソ連より一層深刻なのは、日本が地震国であり、原発群を活断層の上に造ってしまった点にある。
 原発はいったい人間に制御できるものなのか、人間には気が遠くなるような40万年に1度の活断層地震にまで備えなければならないのか、いっそ自然エネルギーで代替し切れないものなのか等々、いまだに解決の目処さえたたない深刻な悩みである。

 世界のエネルギー事情は深刻化する一方だ。中国をはじめ発展途上諸国のエネルギー所要量は、今後急速に膨張する一方だろう。石油など埋設資源の限界か ら、好むと好まざるとにかかわらず、原発に頼らざるを得ないことになること必定だろう。しかもこれらの国々の原発制御能力は極めて低い実態にある。たとえ ば中国では、原発一基当たりのトラブル件数が年に2.4回も発生しており、日本の0.4回の6倍の危険度に達している。高度の制御技術力が必要とされるゆ えんである。
この制御技術の主要供給国は アメリカ、ソ連、フランス、それに日本であり、世界的な寡占の実態にある。企業ベースでみても アメリカの代表的原発会社のW社を傘下に抱えた日本のT社が、世界的寡占体制を着々と構築しつつある。
 日本はいま、原発問題で呻吟している。地球温暖化防止の遅延にも悩んでいる。代替エネルギーの創出に確たる目途がついたわけでもない「産みの苦しみ」を 世界に先駆けて経験中である。課題は重い…が、課題が明確に設定されたときの日本技術の力の凄みは、歴史が証明している。この分野にも、すでに大きな潜在 力が蓄積されつつある。

■新潜在力Ⅳ 命がけの観光資源保有
 観光立国といえば、いろんな国を思いつくが、日本の立ち位置を観光立国といえば、違和感があるだろうか。日本にはこれまで、海外から京都や奈良や鎌倉な どに、たくさんの観光客が訪れている。私たちはこれを、京都には御所があり町屋があるし、奈良や鎌倉には大仏があるから…という程度の「人間世界での資 産」程度にしか、観光資源を認識していなかった。

 しかしいま、阪神淡路、東日本大地震を経て、南海大地震に怯え、江戸時代には180回以上もの火山噴火があったことを知らされた私たちは、自分たちが火山のマグマに乗っかって生きていることを思い知らされた。
そうだ、これまで私たちは、日本の四季は千変万化で美しくて恵みいっぱい、リヤス式海岸の風光明媚はどうだ、温泉は天国だ…と謳歌しつつも、その存在を空気みたいにしか思っていなかった。
 …が、美しさを盆栽に満載したような日本の観光資源が、実は火山のマグマの上に住んでいる、命の代償としての宝物であることを思い知った。その意味では「命がけの資源」といえる。
私たちには当たり前の、火山や温泉や変化する海岸線等の自然は、中国人には羨望の的だともいう。この命がけの観光資源を見事に紡いでいけば、「新・観光立国・日本」が開花する

■潜在力の再確認 日本のキーテクノロジーは、健在である。
 大企業のトップは、総じて自信喪失に陥っており、心躍るメッセージが発信されなくなって久しい。聞こえてくるのは、リストラと為替レートに一喜一憂する言葉だけであり、寂しい限りである。
しかし中堅企業、町工場は元気いっぱいである。そこには旺盛な開発精神と確かな技術力が溢れている。例をあげよう。浜松フォトニクスは、夢の診断装置 PETの心臓部品・光電子増倍管の世界的独占企業であり、社長は「わが社は、百年後の技術を開発している」と鼻息が荒い。ジャンボジェット機のゆるまない ネジの独占的供給者は、東大阪の町工場・ハードロック工業だ。
 かつて、企業の海外進出で、日本産業は空洞化すると、警鐘乱打されたことがあった。しかし今のところ杞憂で、日本のキーテクノロジー(部品技術)は、世 界的高レベルにある。部品技術は商品の生命線であり、日本には他国の追随を許さない確たる技術の蓄積がある。心もとないのは、斬新なコンセプトでこのキー テクノロジーを見事な商品として紡いでくれる大企業に、胆力と元気がないことだ。この際、多くは望まない。せめて一業種2社の、合わせて100人の傑出し た仕掛け人が出てきてほしいものだ。そうすれば、日本は画期的に良くなる。
 以上、難問や課題は、発想を変えれば、それそのものが発展の潜在力になるという事例を例示したが、日本には、これら個別の潜在力を見事に紡いで、魅力ある資産として顕在化できる、高度な基礎能力がある。

■日本社会の完成度は世界一
 国家には、その存立が問われる国家目的がある。国民の安全と経済的豊かさと、何より国民の総和的やさしさが実現されることである。
 日本が安全社会であることは、世界的に周知の事実である。長年にわたり断トツの安全神話が出来上がっており、日本品への信頼も、品質の確かさ、本当の美味しさ、サービスのきめ細やかさのすべてにおいて、その完成度は高い。
 一方経済的豊かさでは、GNPで中国中国に追い抜かれたことで、自信喪失する向きがあるが、一人当たりGDPという個人の豊かさで図ると、日本は中国の約9倍の高レベルにある。
 そして何より、世界中が怨念と格差と対立の軸で動いている中、多価値性の受容、その中での共生と思いやりの日本文化こそ、世界に冠たる基礎能力である。 いま日本では、格差の発生が論じられているが、世界的な悩みのレベルから見れば、その格差など、無きに等しい均等社会である。

  以上、豊かな日本の潜在力を垣間見てきたが、自らの国を美化しすぎて独善的な国粋主義に走ってはいないかと自戒する。しかし本質的にやさしく、多様性を認めて融通無碍の精神で、世界のあらゆる文化を見事に融合して、共存させている日本、衣食住の全ての分野で、しなやかに和洋折衷している大人の国の実力は素 直に評価して良い。【工藤】


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