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中国共産党の大嘘と
日本のマスコミ・学者の大怠慢
2016年3月号
世の中には、大嘘が結構のさばっているが、たいがいの嘘は糺(ただ)され消え去っていく。…が、のさばり続ける大嘘もある。中国共産党の大嘘がそうだ。中国には古代から、「白髪三千丈」という類の誇張癖があるが、「GDP7%成長」というのは、世界的な実害を伴う大嘘である。
国家主席に就任した習近平氏は、2020年には、2010年比でGDPを倍増させるとのたまわった。これを実現するに必要な年々の成長率が7%というわけである。購買力なき15億人もの大所帯を抱えてのこの目標は過大であり、無理に無理を重ねた結果、最近のGDPの実態はマイナス成長のようで、極端なデフレにある。
GDPをごまかしても、経済活動の基礎統計数値はごまかせない。鉄道貨物輸送量は、2012年後半の▲6%から2015年の▲11%と一貫してマイナスに落ち込んでおり、電力使用量もマイナスに急低下したままである。貿易輸出の昨年11月は▲6.8%(前年比)で5か月連続のマイナス、輸入の昨年11月は▲8.7%(前年比)で13か月連続のマイナスである。
あれやこれやの基礎統計のマイナス数値を隠し遂せないまま、GDPが7%も成長したと言い張るのは破廉恥である。嘘をつかざるを得ないのは、真実を告知すると大混乱に陥るからだろう。北京大学・中国社会科学調査センターが発表した2014年のジニ(所得格差)係数は、0.73であり、中国はいま、暴動を通り越して、革命が起きてもおかしくないレベルにある。真実をひた隠しにせざるをえないわけだ。世界に対するメンツもあるし…。
中国共産党は、需要のないまま異常な設備投資を繰り返し、深刻な供給過剰を惹き起こしてしまった。例えば、鉄鋼の過剰生産能力は、日本の全鉄鋼生産能力の、なんと4倍にもおよび、自動車の供給能力は、需要2300万台弱に対して、5000万台だという。嘘の上塗りのツケは大きい。
中国共産党が嘘をつくのは、その体質から驚くには当たらない。しかし日本のマスコミや学者が、7%成長の欺瞞をきちんと糺そうとしないのは驚きである。なぜ、なぜなのだろう。僕が確認出来た限りではあるが、経済活動の基礎統計数値の伸び率がマイナスであることを指摘し、にもかかわらずGDP7%が達成されたというのはおかしいと糺した学者は、拓殖大学総長の渡辺利夫氏と経済評論家の三橋貴明氏のみである。
GDP値は、各種の基礎統計を駆使した精緻な計算式で成り立っている。従って、基礎統計の数値がマイナスである以上、GDPだけが7%前後も成長するはずがない。これは理の当然である。
GDPの7%成長は、隆々たる国家発展の姿を表し、GDPのマイナス成長は、実需不足の深刻なデフレの姿を表し、互いに(5ページに続く)
真逆の関係にある。マスコミや経済学者は、この隆々発展の大嘘を問い質しもせずに、一体中国社会の何の真実を語ろうというのだろうか。
真実を伝える義務を負っているはずのマスコミ、真実追求の責務を負っているはずの学者のほとんどが、国民に対し真実を隠蔽している。真実を暴露すれば、何かの不都合を呼ぶと判断するからなのか、何かが怖いからなのか、それともこんな簡単な嘘も見抜けないほど劣化してしまっているからなのか。もし、真実を報道すれば、国民がパニックに陥るから、真実の報道は控えようと判断しているとしたら、それは不遜で犯罪的である。マスコミや学者の責務は、自分勝手に状況判断をすることではない。ただただ真実を追及し、その受け止めは、国民に委ねるべきである。
今、国家権力による報道の自由の侵害が懸念されている。思想信条の自由は国民の生命線である。権力による侵害は何としてでも防がねばならない。しかし一方で、守るべき価値があってこその報道の自由である。
かって日本軍部が、国民の自由を土足で踏みにじった戦慄の時代、戦勝国アメリカによって、日本人の魂が骨抜きにされた悪夢の時代、そして共産主義大国、ソビエトと中国に陰惨な恐怖がはびこった時代…マスコミはいったいどれほどの勇気をもってこれらに立ち向かい真実を伝えようとしてきたか!
そしていままた、マスコミと学者が、世界を大混乱に陥れかねない中国共産党の大嘘に切り込む気概も鋭さももちあわせないとすれば、実に実に嘆かわしい限りの日本である。
思想信条の自由も報道の自由も、命がけで真実を追い求める真摯さと覚悟にこそ与えられるものだと思う。