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工藤さん

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いま、日本人の心に江戸が旬

2010年12月号

 外国を訪れる度に思う日本がある。

 美しい大自然の恵みの中で育まれてきた感性豊かな伝統文化。そのたくさんの宝物を放り捨てて、どうして私たち日本人は、西洋の乾ききった文明に心を奪われてしまったのだろうか。そしていま、そんな気持ちの私を江戸が呼ぶ。
 西洋の眩しく際立った強さにこそ学ぶべきで、恥ずかしい江戸など、いっときも早く忘れ去りたかった明治。
 その明治から150年が経ったいま、日本の政治も経済も自信をなくしてしまった。日本文化はしっかりしているか!
 その混迷の中で、奇妙にいま江戸が旬だ。きっと私たちは、混迷を脱する礎が江戸心(ごころ)にあるのだと、本能的に気付いているのだと思う。
 青い目で見たたくさんの江戸がある。私たちが一顧だにしなかった江戸の姿だ。
 英国の詩人アーノルド(1832~1904)は、日本を「地上で天国あるいは極楽に最も近づいている国だ」「その景色は妖精のように優美で、その美術は絶 妙であり、その神のようにやさしい性質はさらに美しく、その魅力的態度、礼儀正しさは、謙虚ではあるが卑屈に堕することなく、精巧であるが飾ることもない」と絶賛している。
 他の青い目で見た日本人像が続く。
 
 ◇この民族は笑い上戸で、心の底まで陽気である
 ◇日本人の生活は、上は将軍から下は庶民まで質素でシンプルだ
 ◇日本人は気楽な生活を送り、欲しい物もなければ、余分な物もない
   ◇日本人は世界一遊び好きの国民で、宗教までも遊びの対象にする
   ◇根が親切と真心は、日本社会の下層階級全体の特徴である
   ◇日本人では、貧は人間らしい満ち足りた生活と両立する
   ◇日本人は世界中最も礼儀正しい民族
   ◇家屋はあけっぴろげで生活が近隣に隠さず開放されており、近隣には強い親和と連帯がある
   ◇日本人の自然と親和する暮らしぶりに驚きと感嘆を禁じえなかった
   ◇世界で最大の人口を擁する巨大都市・江戸は、あまりにも自然に浸透されていて、
      都市であると同時に田園であるような不思議な存在…それは巨大な村だった

 眩いばかりのリアリテイで、実はこれが迷える現代日本人のそもそもの下地なのだ。何と感動的なファクトではないか!
 青い目で見た江戸は、私たちがいかに大切なものを捨て去ってきたかを、そして私たちの心根がどうあるべきかを、まるで神のお告げのように教えてくれる。
 もうひとつ、現代日本にひっそりと継承されている江戸びとの心根「江戸しぐさ」がある。いくつか見てみよう。

 ◇七三歩き…自分が歩くのは、道の端の三割、道の七割は急ぎの人や荷車に譲って邪魔にならないよう気を配る
   ◇傘かしげ…雨の日に互いの傘を外側に向け、ぬれないようにすれ違う
   ◇こぶし腰浮かせ…渡し舟で後から乗ってくる人のため、こぶしひとつ分腰を浮かせて席を詰める
   ◇うかつあやまり…足を踏まれたとき、踏んだ方も踏まれた方も「うかつでした」と謝りあえば角が立たない
   ◇時泥棒…断りなく相手を訪問したり、約束の時間に遅れて、相手の時間を奪うのは重罪(十両の罪)にあたる
   ◇あとひきしぐさ…見送りは、せめて相手が見えなくなるまで見送りしぐさを

 江戸びとたちの、何とやさしい気遣い合い!現代の私たちの心が、いかに乾ききっているかが一目瞭然でもある。
 明治から現代まで、日本は歴史を捨てて、西洋流の弱肉強食と知識至上の世界をひたすら模してきた。その結果が今の混迷である。自縄自縛というところだが、 出口がなければやり直せばよい。モノマネでなく、伝統の豊富な蓄積にギアチェンジすればよい。食うか食われるかでなく気遣い合う関係を、知識ではなく叡智 をこそ大切に。江戸びとの気遣いの文化はこのことをこそ実践していた。ならばその心を取り戻せばよい。私たちの心の奥底にすでにあるものなのだから。 【工藤】

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