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社長コラム

工藤さん

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テロと向き合うということ

2016年1月号

 人間の歴史は、差別と対立と抗争がエスカレートする歴史であった。強者が弱者を、強国が弱国を抑圧し収奪してきた歴史であり、白色人種による近代の植民地主義は、その完成型といえる。そして世界ではいま、歴史的に虐げられてきた弱者が、強者や強国に挑み始めている。世界中で起きているテロである。

 テロ発生の動機は、強国や強者による差別・抑圧と収奪への抵抗にあり、異宗教との確執と報復、そして貧困への絶望と極端な貧富の差への怒りにあり、テロは、弱者の心の深層に共鳴し連鎖していく磁力をもっている。弱者は世界の大半を占めるので、インターネットの力にも相乗して、テロはアッという間に世界中の弱者に拡散してしまった。

 過激組織イスラム国にはせ参じる世界の若者たちは、自身の絶望感をイスラム国に託す愉快犯たちである。イスラム国は、インターネットで世界中にプロパガンダを流して、絶望の若者を囲い込んでいる。アメリカでは、300人ものツイッターがこれに呼応し続けているという。

 いま、世界の強国は、「目には目を」と、狂ったようにイスラム国への爆撃を繰り返している。プーチン大統領は、「巡航ミサイルには核兵器も搭載可能だ」と豪語した。狂気の沙汰である。しかしいかに爆撃を強化しようとも、テロを根絶できはすまいと思う。テロリストは、善良な市民の町から神出鬼没で、同じ人種のどの顔がテロリストで、どの顔が善良な市民かを見分けられないからだ。おっつけ強国の兵士は及び腰となる。

 イスラム国と敵対しているフランスやイギリスには、それぞれすでに650万人、320万人のモスレムが住んでいる。ユーロには1500万人ものモスレムだ。このモスレムの中からテロリストは見つけ出せないから、モスレムや難民全体に網を被せて警戒するのは、自国内の「人種差別問題」を激化させる危険を孕む。

 アメリカ大統領選の候補トランプ氏は、「シリア難民をアメリカに受け入れるな。万里の長城を築け」と叫び、共和党支持者と州知事の半数以上が賛同しているという。ドイツでも難民受け入れ反対のデモが続き、日本でもY元・衆議院議員が「日本に移民受け入れはすべきでない」と主張している。世界の強国は、ますます救いのない「差別」と「対立」の悪魔に心を売り渡そうとしている。

 そう、いまやテロ問題は、イスラム国の暴挙というに留まらず、強国の国内問題に連鎖してしまっている。かって弱者の抵抗は単発で鎮圧され、情報統制のゆえに連鎖することはなかった。しかしインターネットでは、抵抗する弱者の姿が瞬時に伝わるので、共鳴と連鎖によって、弱者のエネルギーは強力となる。

 フランスやイギリスをはじめ、世界中に住み差別に慄くモスレムたち。貧困に絶望した欧米の若者たち。スペインの若者は、半数が無職だという。韓国の中高生たちの91%は、「韓国社会は腐敗した社会」と、すでに自国に絶望している。漢民族の差別と圧政に苦しむチベット人にウイグル人。中国国内で貧困と差別に喘ぐ2億6千万人の捨てられた「農民工」たち。ロシアとウクライナやチェチェンとの紛争の火種もまだ消えてはいない。シリアを巡るテロと応報の先も見えない。差別や抑圧や貧困から脱し得ない限り、弱者の抵抗は拡散し、過激化の一路を辿ると思う。

 世界を思いのままにしてきた白色人種や中国大陸で殺戮を繰り返してきた中国人種は、「対立し抗争する」性(さが)をもっている。この性(さが)に固執して、怨念や報復を繰り返す限り、不幸な紛争の根を断つことはできない。

 この対立や報復・抗争の対極にあるのは、「多様性への寛容」であり「調和と共生」である。テロの根っこにある貧困、差別、格差を直視して、多様な価値を認め合い、調和を求めて共生を志さない限り、テロは増殖するだけだろう。

 転じて日本の人びとは、世界中が、対立と報復・抗争を繰り返してきた中にあって、八百万の神々をも許容する「多様性への寛容さ」をもち、「共生と調和」のやさしい心根をもって生きてきた。これこそ世界を混迷から救い、安寧に導く「世界軸」の基本なのではないだろうか? 日本人は、国際関係の中でおとなしくばかりしていないで、「多様性への寛容」「共生と調和」のやさしい心根で堂々と振る舞う時がきたと思う。

 寛容、共生そして調和は「やさしい心」にある。「やさしさ」など無力だと蔑視してきたのがこれまでの人間世界であった。しかし人類が混迷に向かういま、人類史上初めて「やさしさ」こそが力なりと、舵を切り替えてもよい!【工藤】

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