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工藤さん

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国際紛争と私の間合い

2010年10月号

 いったい国際関係とかいうやっかいなものと、どうつきあえばよいのだろうか。国内には曲りなりにも正義のメカニズムが働いており、私たちはそれと対峙しな がら自己存在を確かめることができる。しかし国際関係に正義はない。子どもの喧嘩と同じで、先に手を出した方が勝ちの理不尽の世界だ。

 最近は中国や北朝鮮との紛争報道のせいで、自分の心がささくれだち、暴力化していくのに戸惑っている。眩いほどの青春時代、寛容と対話の美徳を教えられ、ずっと信じてきたはずなのにいま役立たず、心が急速に短絡化していく自分が恨めしい。
国際紛争の典型は領土問題だ。尖閣諸島や竹島や北方領土問題のそれぞれに心乱れて激昂し、テレビに向かってシャウトするしかない…一体どうしてこうなってしまったのか。
もともと海を越えた先の国のことなど、私たちは無知に等しい。その私たちをマスコミは、テレビに日本を非難する紛争相手国の指導者を大写しにして煽り続ける。心に火をつけられた大衆の怒りは御しがたく害悪である。いまそれが、自分の中にも巣くっている。
扇動には、問いかける誰かがいなければならない…「何かおかしい。国の立場は違っても、相手国の民も同じ生活者、そんな理不尽がありようはずがない」と。

 その問いかけこそが、相手国の民を理解しようという姿勢を呼び、相手国の理不尽の由縁を紐解くことにつながる。テレビにシャウトする前に深呼吸をし、でき れば一人でもいい、その国の友の顔を思い浮かべることこそが、無法で複雑な国際関係を暴力化せずに、冷静に対処できる唯一の道だと思う。
しかし領土問題に憤る私たちは、相手国以前に、国境最前線に住む日本人のことにさえ無知である。尖閣諸島や基地問題の沖縄が、一体どこに位置しているのか さえわからない。実は日本の最西端は、東京から2000kmのはるか彼方にあり、台湾からわずか170kmの近くにある。この目線に立てば、「なぜそこが 台湾領でなく日本領なのか?」という歴史への問いが生まれ、国境最西端の住人にとって、首都東京は2000kmも離れた異邦であり、170kmそばの台湾 や、その先に連なる東南アジアの国々と仲良く付き合いたいと願い、日本からの独立を希求する人がたくさん居ることに気づくはずだ。
こういう目線さえもてれば、国際関係は抽象の積み木ではなく、生活者・自分につながるたくさんの糸をもつ、日常事項に変容すると思う。

 死ぬ一歩手前の今頃になって、権力集中国家・中国や北朝鮮とのあれこれで、何でテレビにシャウトしなければならないのかと情けない限りだが、長きにわたり平和を貪り、国際音痴になってしまったのだから仕様がないと思う。
国境付近の日本の住民も相手国の住民も、自分と同じ生活者として生きている。生活という日常性には恒常的な過激はないし極端もない。国際との付き合い方のヒントがまさにここにある。

 頭のテッペンで作った抽象的な国際関係は、過激で一方的であり、破滅への誘惑に満ち満ちている。しかし生活者の眼で見た国際関係は内容が豊穣で、文化的にも地理的にも関わり続けてきた近隣者しての平常心や親和性に富む。
尖閣諸島の紛争の最中に、日本の政府高官が、(日中の)法的手続きの意味の違いに無知だったと告白していたが、日本国益の実行者としては失格である。

 否応なしに付き合っていかざるをえない隣国の文化のことは、何が何でも貪欲に学ばなければならない。学びが事態を緩和するし、窮地で叡智を与えてくれる。【工藤】

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